ロダンという人 の巻
2014年 01月 25日
森鷗外「花子」1910年(明治43年) 7月 三田文学に発表。
---幾つかの台の上に、幾つかの礬土(ばんど)の塊がある。
又外(ほか)の台の上にはごつごつした大理石の塊もある。
日光の下に種々の植物が華さくやうに、同時に幾つかの為事(しごと)
を始めて、かはるがはる気の向いたのに手を着ける習慣になつてゐるので、
幾つかの作品が後れたり先だつたりして、
此人の手の下に、自然のやうに生長して行くのである。
此人は恐るべき形の記憶を有している。
その作品は手を動かさない間にも生長しているのである。
此人は恐るべき意志の集中力を有している。
為事に掛かつた刹那に、もう数時間前から為事をし続けてゐるやうな
態度になることが出来るのである。----
*日本語が音符のように配置された見事な表現です。
文中でロダンは言います
「人の体も形が形として面白いのではありません。霊の鏡です。
形の上に透き徹つて見える内の焔が面白いのです。」
*ロダンの制作対象の見方、捉え方が表現されています。
画像はすべて国立西洋美術館前庭に設置されております、ロダンの作品群です。東京の正月の美しい青空とル・コルビュジエ設計の本館も含めてご覧下さい。
1・考える人 (「地獄の門」から独立した作品)
2・カレーの市民 (感動しました)
3・アダム (「地獄の門」の左手に設置されております。)
4・地獄の門 (高さ540cm、幅390cm、奥行100cm。上部から地獄を見つめている人が、作品「考える人」です。)
5・エヴァ (「地獄の門」の右手に設置されております。)
6・エヴァ ( 後姿です。)
7・アダム ( 後姿です。)
*1921年(大正10年) 「花子」さんは作品2点を持って帰国しました。
新潟市美術館所蔵です。
*1910年 9月 (「花子」は7月に発表) ロダン 70歳を祝って、白樺派は30枚の浮世絵と「白樺」をロダンへ贈り、
翌年1911年(明治44年) 返礼として「マダム・ロダン像」、「巴里ゴロツキの首」、「ある小さき影」の三点が送られてきました。日本初のロダン作品です。
大原美術館(岡山県 倉敷市)に寄託されています。