思うままに


by abdulmajid0922
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葉室 麟 『散り椿』読後感の巻

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日本文学特有の情趣豊かな美しい文章は読者を慰藉するのです。

文中より

・夜空に青い月が出ていた。

・月を見ながら、采女は胸中の寂寥を思った。

・新兵衛は縁側から月を見上げた。

「ひとは大切に思うものに出会えれば、それだけで仕合わせだと思うております」

・政家は駕籠に乗り込もうとしてふと空を見上げた。

星が降るように輝いている。


・篠は胸の中で、「生きてくださいませ、あなたー」

生きて、生き抜いてください。

それが、私にとっての幸せなのです。

あなたが生き抜いてくださるなら、私の心もあなたとともにあるはずです。

形に添う影のように、いついつまでもあなたの傍に寄り添えることでしょう。

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剣術の平山道場の四天王と言われた
坂下源之進
篠原三右衛門
榊原采女
瓜生新兵衛

一人違和感のある名前が采女である。

さては榊原采女殿LGBTであったかと、この名前に何か企みがあると思いながら、勤しんで読了したが別に仕掛けはなかった。

何故、采女という名前にされたのか解せぬ。


.....やむなく藤吾は酒を受けた。
「一杯だけですぞ」
念を押して杯に口をつけた。
それが間違いのもとだった。

唯一、ぷっと吹き出す滑稽な描写です。

夜空の星のごとく、人の世にあっては愛おしい藤吾の若さが燦然と輝きを放つのです。


登場人物たちが若かりし日々を語るとき、著者の技巧に嵌まる読者は、同化してつい昔の友達の顔を思い浮かべ郷愁に誘われ胸が熱くなり、ここに『散り椿』の滋味が増すのです。



椿のみならず、人の命のみじかくも美しい輝きを露草や螢に見出した文章があります。

『螢草』より

....露草は螢草とも言う.....

「螢はひと夏だけ輝いて生を終えます。
だからこそ、けなげで美しいのでしょうが、ひとも同じかもしれませんね」
.....。


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「五色八重散椿」
撮影日:2016年3月18日

東京都中野区を散策して都立家政駅に向かう途中、若宮の住宅街で偶然発見した「五色八重散椿」です。

速水御舟『名樹散椿』の知識がありましたので目の前に突然現れますと白昼夢を見ているのか、頭の中で頓珍漢と鳴ったようでした。
だって、一本の木に紅色、桃色、白色、それに様々な絞りが混在して咲き誇っているのですから、それは、それは現とは思えない夢見るような心地よい初体験でした。


「五色八重散椿」が咲くところをもう一ヶ所、

新宿区原町2丁目
「有島武郎旧住居跡」の記念碑裏側の敷地内に植えられています。

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速水御舟『名樹散椿』重要文化財
二曲一双 山種羙術館

葉室 麟「散り椿』の装画に使用されました。

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by abdulmajid0922 | 2017-05-10 11:32 | Comments(0)