思うままに


by abdulmajid0922
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セルゲイ・エリセーエフ の巻

夏目漱石『こゝろ』1914年大正3年刊行

上 先生と私

....私が先生と知り合いになったのは鎌倉である。

私がすぐ先生を見付け出したのは、先生が一人の西洋人を伴れていたからである。

その西洋人の優れて白い皮膚の色が、掛茶屋へ入るや否や、すぐ私の注意を惹いた。.....

彼は我々の穿く猿股一つの外何物も肌に着けていなかった。....

猿股一つで済まして皆なの前に立っているこの西洋人がいかにも珍しく見えた。

.....翌日もまた先生に会った時刻を見計らって、わざわざ掛茶屋まで出かけてみた。

すると西洋人は来ないで先生一人麦藁帽を被ってやって来た。
........
(青空文庫)


鎌倉で「私」が一目惚れした「先生」と一緒に海水浴をしていた西洋人のモデル、セルゲイ・エリセーエフ
Sergei Grigorievich Eliseev(1889-1975)の実家は、

ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』〔1881年・明治14年刊行〕では、二ヶ所に書かれています豪商「エリセーエフ兄弟商会」です。


1 : 父親フョードルが僧院長の食堂に入って来た場面です。

第ニ編 場ちがいな会合

ハ 大騒ぎ

「....ここじゃどんなご馳走をこしらえているんです?」と言って彼は食卓に近づいた。

「ファクトリイの古いポートワインにエリセーエフ兄弟商会の蜂蜜酒か、やあ、こいつは驚いた! ....これはまただいぶ酒びんを並べましたなあ、へ、へ、へ!
ところで、だれがこういうものをここへ持ってきたと思います? ロシヤの百姓ですぜ、....
神父さん方、あなた方はまさに民衆の生き血を吸っているんだ!」.......



2 : 小一時間ほどほんとうに心からドミートリイを愛したことがあるというグルーシェンカに会うために、血まみれになって手に入れた札たばを持ってプロートニコフ商店に大量のシャンパンと食料品を注文する長男ドミートリイ.....

第八編 ミーチャ

五 とっさの決心

プロートニコフ商店は.....
金持ちの商人たちが協同で経営している、.....
首都の店にあるものならなんでも、どんな食料雑貨品でもあった。

『エリセーエフ兄弟商会元詰め』の酒類、果物類、葉巻き、茶、砂糖、コーヒー等、なんでもあった。......


(豪華版 世界文学全集ー15
ドストエフスキイ『カラマーゾフ兄弟』 1976年 講談社 北垣信行訳 より)

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画像:
東京大学の舊加賀藩上屋敷育徳園心字池
(三四郎池)


夏目漱石『三四郎』(1908年明治41年)で、
三四郎を一目見た美禰子が池のほとりを歩きながら、嗅いでいた白い花をわざわざ三四郎の前に落とし、その場を去ったあとに三四郎は本能に突き動かされたように拾い、匂いを嗅ぐ官能的な描写があった「三四郎池」のほとりにて


1908年明治41年-1912年明治45年、
セルゲイ・エリセーエフは東京帝国大学国文科に在籍しました。


セルゲイ・エリセーエフにまつわるエピソードがここにあります

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画像:
司馬遼太郎『街道をゆく』36 1992年刊
本所深川散歩、神田界隈

神田界隈

英雄たち

.....漱石門下だった白系ロシア人エリセーエフの逸話がおもいだされる。

欧米における日本学の草わけだったセルゲイ・グリゴリエヴィッチ・エリセーエフ(一八八九〜一九七三) のことである。

.....米軍による日本本土への爆撃がはじまったとき、エリセーエフ教授はマックアーサー将軍に進言して、神田の神保町を目標から除外するよう忠告したといわれているのである。

むろん証拠はない。
.....

紙を切り抜いたようにそこだけが焼けのこった。

エリセーエフ教授の進言によるものかどうかはべつとして、意図的だったと想像できる。

倉田保雄氏の『エリセーエフの生涯』(中公新書)によると、エリセーエフ自身、そんなことをいったことがないらしいが、フランスの日本学者のあいだでは常識のようになっているという。
.......



1973年 The Japan Foundation Awards(国際交流基金賞) 初めての外国人、セルゲイ・エリセーエフに授与されました。


ロシアで、フランスで、アメリカで「日本学」を教育したセルゲイ・エリセーエフの存在が今日、まったく人口に膾炙されないことが遺憾に存じます。


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by abdulmajid0922 | 2017-06-24 13:42 | Comments(0)