《マルチャーノ・デッラ・キアーラの戦い》/《アンギアーリの戦い》/《タヴォラ・ドーリア》の巻
2017年 06月 25日
レオナルド・ダ・ヴィンチがフィレンツェ軍とミラノ軍との『アンギアーリの戦い』1440年、
ミケランジェロがフィレンツェ軍とピサ軍との『カッシーナの戦い』1364年を描くよう、
1501年にフィレンツェの終身国家主席に選ばれたピエロ・ソデリーニに制作を依頼されました。
ソデリーニは先にミケランジェロに《ダヴィデ》を制作させています。
ミケランジェロの弟子ジョルジョ・ヴァザーリがダ・ヴィンチの『アンギアーリの戦い』の前面に新たに壁を作って製作したと考えられているフレスコ画《マルチャーノ・デッラ・キアーラの戦い》です。
現在では、ジョルジョ・ヴァザーリのフレスコ画が描かれた壁は二重構造になっており、この壁の裏にレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた未完の油彩壁画《アンギアーリの戦い》が隠されている可能性があると考えられています。

画像:(Google Arts & Culture)
ジョルジョ・ヴァザーリ 《The Battle of Marciano in Val di Chiana》
《La Battaglia di Marciano della Chiana》
《マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い》
フレスコ画 760cm×1300cm
1570-1571 ヴェッキオ宮殿

《マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い》部分
フィレンツェ軍旗に書かれた"CERCA TROVA"「探せ、さすれば見つかる」と記されています。
絵の中にヴァザーリは後世の人々に謎をかけたように、意味深な言葉を残し学者、研究者は今尚、雀躍りして真相究明をしているのです。

《マルチャーノの戦い》には、左手前の馬、中央の白馬の動き等、随所に《タヴォラ・ドーリア》をお手本にしていることが見えるのです。
《タヴォラ・ドーリア》に描かれた白馬の右下の兵士のポーズをもヴァザーリは踏襲しています。

《タヴォラ・ドーリア》部分

《タヴォラ・ドーリア》(ドーリア家の板絵)
ポプラ板/油彩・テンペラ
85.5cm×115.5cm 16世紀 作者不詳
Galleria degli Uffizi蔵(2012年 東京富士美術館の寄贈による)
〈1580年に竣工したウフィツィ美術館はジョルジョ・ヴァザーリの設計です〉
《タヴォラ・ドーリア》とは、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた
1440年のミラノ軍とフィレンツェ軍との戦い《アンギアーリの戦い》の中心的な部分の軍旗争奪戦を模写した作品です。
かつてない、人馬の苛烈を極めた戦闘描写は、後世の画家たちが描く戦争絵画の嚆矢となりました。


三菱一号館美術館にて、
レオナルドXミケランジェロ展 が開催されています。
2017年6月17日〜9月24日
(日本経済新聞 2017年6月17日)
両者の作品どちらが、どちらの絵かわからぬほどいずれも、官能を呼び起こさぬわけにはおかない、ため息つく美しさです。

道近美の展覧会にても
レオナルド・ダ・ヴィンチ
《少女の頭部/《岩窟の聖母》天使のための習作》(ファクシミリ版・東京富士美術館)
《岩窟の聖母》
の複製を展示してあります。
(図録にはどちらも掲載されていません)
レオナルド・ダ・ヴィンチと
「アンギアーリの戦い」展
〜日本初公開「タヴォラ・ドーリア」の謎
北海道立近代美術館〜2017年8月15日迄