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カラヴァッジョ展/北海道立近代美術館 の巻


《瞑想するアッシジの聖フランチェスコ》、《女占い師》が展覧会初日には間に合わず展示スペースだけは確保されてありました。

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"Vaso di Fiori,Frutta e Ortaggi"
《花瓶の花、果物および野菜》
1605-06年より前
油彩/カンヴァス 105×184cm
ボルゲーゼ美術館(ローマ)
Ministero per i beni e le attività culturali - Galleria Borghese,Roma 


カラヴァッジョ独特のテネブリズムと高度な写実的描写力には度肝を抜かれます。

蝶が舞う花卉には春の花、花びらが半分散った花、秋になり弾けた実、黒く熟した実が描かれています。

目を凝らして見ますと、白い花瓶の右側には大きいトカゲと小さいトカゲが今まさに噛みつきあいの喧嘩が始まりそうな形相で描かれてあり、カラヴァッジョの気性の激しい性格があらわれているようです。

花卉だけを主題に描いたヤン・ブリューゲルやアルチンボルドが脳裏に浮かんできます。

1596年ローマ、カラヴァッジョは画家カヴァリエーレ・ダルピーノ(1568-1640)の工房で8か月の間、助手として働いていました。

1607年4月、ダルピーノは銃の不法所持で逮捕され、教皇庁会計院に財産を没収されたのです。

ローマ教皇パウルス五世は150点近い絵画コレクションの放棄と罰金を条件にダルピーノを釈放しコレクションを甥のシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿に譲渡したのです。

没収品にはカラヴァッジョの初期作品が含まれていました。

本作品はその中の一点なのですがカラヴァッジョ筆であるとは未だ特定されていません。

本作品の本邦初公開は10年前です。

《2匹の蜥蜴がいる静物》
作者不詳(17世紀に活動)、カラヴァッジョの追随者

『ボルゲーゼ美術館展』
2009年10月31日〜12月27日
京都国立近代美術館

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"Bacchino Malato"
《病めるバッカス》1593-94年頃 
油彩/カンヴァス 67×53cm
ボルゲーゼ美術館(ローマ)
 
札幌会場限りの本邦初公開!

バッカスの聖樹である蔦を冠にして、カラヴァッジョは両手で慈しむように葡萄を抱えています。

カラヴァッジョのローマでの貧しい下積み生活の時代、モデルを雇う金は無く、病み上がりの自分を鏡に映して描いた自画像であり、静物画も肖像画も描ける自分自身をローマの美術市場に売り出したのです。

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"Suonatore di Liuto"
《リュート弾き》1596年
油彩/カンヴァス 96×121cm
個人蔵

本邦初公開!

カラヴァッジョの最初のパトロン、トスカーナ大公国の枢機卿フランチェスコ・マリア・デル・モンテ(1549-1627)に愛と忠誠とを誓い、歌を捧げるカストラートを描いています。

ヤン・ファン・エイクが《アルノルフィーニ夫妻の肖像》1434年 で凸面鏡に反射した室内を描いたように本作品のカラヴァッジョは花瓶のガラスに反射した室内を描いています。

カラヴァッジョは初期フランドル派の影響を受けていることがわかります。

カラフの細い口にすべての花が入るとは思えないたくさんの花々を描き、朽ちる前の刹那の美、若き肉体の老いる前の刹那の美それは虚しいものなのですと読み解くことができます。

白いアイリスは春の花、梨が実るのは秋。

カラフの表面と花々には水滴も描いています。

若い頃、カラヴァッジョといざこざがあった画家ジョヴァンニ・バリオーネは『画家・彫刻家・建築家列伝』(1642年出版)の中で、カラヴァッジョ本人が本作品を彼自身の最高傑作だと述べていたと伝えています。

図録よりー


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"Medusa"
《メドゥーサの盾》1596-98年
油彩/カンヴァス(ポプラ材の凸板円形盾) 直径48-50cm
個人蔵

2016年、国立西洋美術館でも公開された第一バージョンです。
Michel A F のサイン入りです。
(ラテン語で Michel Angel Fecit)

ファンデーションは塗っていますよねと言いたくなるほどカラヴァッジョの自画像であるメドゥーサの美しい肌の描写には圧巻の画力を見ることができます。

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"Decapitazione di Sant'Agapito"
"Martyrdom of Saint Agapitus"
《聖アガピトゥスの殉教》1606-09年 
油彩/カンヴァス 116×98cm
パレストリーナ、司教区博物館(ローマ)
Palestrina(Roma),Museo Diocesano di Arte Sacra.
Direzione Centrale per I’Amministrazione del Fondo 
Edifici di Culto del Ministero dell’Interno

274年8月18日、キリスト教の棄教を迫られ、拒んだアガピトゥスはパレストリーナの町の外で斬首刑により15歳で殉教しました。

聖アガピトゥスはパレストリーナの守護聖人です。

聖人の斬られた首から飛び散る血が二つの口の細いカラフに溜まっています。

首が斬り落とされる瞬間という凄惨な主題に対して、衣擦れの音がしたであろう肩から滑り落ちるアラベスク模様の艶のある上質な絹織物が耽美的な印象を残すのです。


1606年5月28日
殺人事件を起こしたカラヴァッジョには「見つけた者は誰でもこの罪人を殺しても良い」という重い死刑宣告が下されました。

5月から9月にかけてカラヴァッジョはコロンナ家の援助のもと、コロンナ家の領地パレストリーナで隠れ家生活をしていた時期に制作したのです。

ローマのバルベリーニ宮殿の国立古代美術館にて修復作業が行われ2008年9月20日にパレストリーナ司教区博物館に戻されました。

見ればみ見るほど目を閉じたくなる恐ろしくぞっとする怖い絵です。

驚くほど質素な額に収められ展示されています。

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"San Sebastiano" 
《聖セバスティアヌス》1606年
油彩/カンヴァス 170×120cm
個人蔵(ローマ)


3世紀末期、ローマ帝国の軍人、近衛兵の一団を指揮していた眉目秀麗なセバスティアヌスはキリスト教徒であったことが発覚し、ディオクレティアヌス帝から処刑が言い渡されたのです。

描かれていない、矢を放った死刑執行人は観覧者の側にいるのです。

死刑執行人の役割を担うのは観覧者ということです。

カラヴァッジョの奇想天外な発想です‼︎!

カラヴァッジョ独特のテネブリズムは地面に落ちた布に配色された鮮やかな紅白でより一層、美しく対比を強調して格調高い作品に仕上げました。

ローマからナポリへ逃れていた期間に制作されました。

*シチリア島、シラクーザの守護聖女となったルチアは304年頃、同じディオクレティアヌス帝のキリスト教弾圧により短剣で首を斬られ殉教したのです。
カラヴァッジョは《聖女ルチアの埋葬》を制作しました。

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"Il Cavadenti"
《歯を抜く人》1608-10年頃
油彩/カンヴァス 139.5×194.5cm
ウフィツィ美術館群パラティーナ美術館(フィレンツェ)
Firenze,Gallerie degli Uffizi,Galleria Palatina

本邦初公開!
キアロスクーロを際立たせて庶民の日常生活を描いた晩年の風俗画です。

バンビーノの頭が置き物のひとつと見紛うほど、テーブルの上の小物と同じ高さに配置されているのが一層可愛らしく、カラヴァッジョの諧謔と子供への優しい眼差しが窺えます。

全員が患者に同情し、集中して注目している最中、ハットを斜にかぶり鉗子を握りしめ歯を抜く人は口から血が垂れている患者に集中せず一瞬、きらりと瞳を輝かせ観覧者を真っ直ぐ見ているところが滑稽で藪医者であることを匂わせるのです。

患者の歯が一本、光を受けて輝きを放つ技法はレンブラントやフェルメールに継承されました。

金縁の額の下部にプレートが付いています。内容は
MICHELANGELO MERISI, DETTO CARAVAGGIO (ATTR,A)
1573-1610
IL CAVADENTI (INV.1890.No.5682)



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"San Giovanni Battista"
《洗礼者聖ヨハネ》1609-10年頃
油彩/カンヴァス 159×124cm
ボルゲーゼ美術館(ローマ)
Ministero per i beni e le attività culturali - Galleria Borghese,Roma 

ローマ教皇パウルス五世(在位1605-21年)から恩赦を得るためにと、甥にあたるボルゲーゼ枢機卿(1577-1633)へ贈呈しようと逃避行中のナポリで枢機卿の好みに合わせて描いた作品です。

カラヴァッジョがローマ教皇から死刑宣告の恩赦を請願しようとナポリからローマへ向かった船の荷物の中に保管されていた三点の絵の中の一点です。
(他の二点は《法悦のマグダラのマリア》、《横たわる洗礼者聖ヨハネ》)

聖ヨハネのアトリビュートである切り株は足元にあり、子羊ではなく聖ヨハネに背を向け葡萄の木に気をとられているのは牡羊、横木のない十字架の長いアシの杖は人間の罪が贖われていないことを示してボルゲーゼ卿にカラヴァッジョ自身の救済を求めているのです。

展覧会場にて実寸の本作品を目の当たりにしますと、聖ヨハネの妖艶な容姿がボルゲーゼ卿をかなり挑発していることがよく伝わります。

ボルゲーゼ枢機卿への贈呈品にふさわしく会場の展示品の中では最も豪華な金縁の額に収められている、
本作品はカラヴァッジョの生存中にはボルゲーゼ卿の下へ届きませんでしたが恩赦を乞い願うカラヴァッジョは強かにロビー活動をしていたことが理解できます。

本作品の本邦初公開は、
『ボルゲーゼ美術館展』
2009年10月31日〜12月27日
京都国立近代美術館

カラヴァッジョの作品は他に2016年、上野の国立西洋美術館で世界初公開された

《法悦のマグダラのマリア》

"Maria Maddalena in Estasi"


2018年にイタリアで開催された「カラヴァッジョの事実」会議で初めて一般公開された

《横たわる洗礼者聖ヨハネ》

"San Giovanni Battista disteso"

が展示されています。



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《メドゥーサ》を除き、他の全作品はアクリル板やガラス板の覆いをせずに出展してあることには驚きました!

《花瓶の花、果物および野菜》を出展していたことには感激しました。

《ホロフェルネスの首を斬るユディト》、《ゴリアテの首を持つダヴィデ》は見られずとも十分、楽しむことができた企画です。

Caravaggio 2019-2020
La verità dell'arte
カラヴァッジョ展
2019 8.10-10.14
北海道立近代美術館

(画像はチラシ・図録を使用しました)

何日君再来。

by abdulmajid0922 | 2019-08-11 18:00 | Comments(0)